株式会社pamxy代表の西江です。
この記事ではIP創出の世界の歴史を振り返りながら、
技術的パラダイム・シフトが起こったIP創出の最新手法について接触深度という観点で述べていきます。
日本のIP創出事例
世界のIPランキング TOP3の蓋を開けると1位と2位は日本のIPという結果になりました。
それぞれのIPの人気の理由を考察していきます。
ポケモン
蓋を開けると1位と2位は日のIPという結果になりました。
ポケモンのIPを包括管理する株式会社ポケモンの代表 石原さんは
ポケモンが普遍的に愛される理由として「収集、育成、交換、対戦」の4つを挙げています。
- 収集
ポケモン図鑑を起点として、人間の収集意欲に訴求しています。
特にこの収集欲は日本人との相性が良い要素でもあります。 - 育成
育成に関してはポケモンが育つことによって、個別性を有し自分だけのポケモンとしてより愛される要素になります。
交換に関して友達が育てたポケモンや、交換という特定の状況下でのみ発生するイベントなどがあります。
- 通信
育てたポケモンが外界でどう動くのかの一種の親心視点でのゲームプレイが可能です。
- 対戦
これまで主人公が戦うのが常識だったゲームにおいて、自身で育てたポケモンが戦闘を主人公の代わりに代替するというのは革命的でした。
横展開におけるポケモンカードの重要性
ポケモンというIP(インテレクチュアルプロパティ)は、ゲーム、アニメ、映画、玩具、グッズなど様々なメディアで展開されており、その中でポケモンカードは非常に重要な役割を果たしています。
ポケモンカードは、1996年に日本で初めて発売され、その後世界中に広がりました。
以下に、ポケモンカードがポケモンIPの収益において果たした重要な役割について述べます。
- 販売数の増加による収益拡大: ポケモンカードは、これまでに数十億枚以上が販売されており、その販売数の増加によってポケモンIP全体の収益が拡大しています。
- 新しいファン層の獲得: ポケモンカードは、子供から大人まで幅広い年齢層に人気があります。これにより、新しいファン層を獲得し、ポケモンIP全体のファンベースを拡大しています。
- セカンダリーマーケットの活性化: レアカードやプロモカードの人気により、セカンダリーマーケットが活性化されています。これにより、ポケモンカードの需要が高まり、さらに収益が増加しています。
- 公式トーナメントの開催: ポケモンカードは、公式トーナメントも開催されており、プレイヤー同士が競い合う場が提供されています。これにより、ポケモンカードの魅力が広がり、新規ファンの獲得や既存ファンの維持につながります。
- クロスメディア展開: ポケモンカードは、ゲームやアニメなど他のポケモンIPと連動して展開されています。これにより、ポケモンの世界観がより一層広がり、ファンの満足度が向上し、ポケモンIP全体の収益に寄与しています。
以上の点から、ポケモンカードはポケモンIP全体の収益において重要な役割を果たしていると言えます。
ハローキティ
世界の共通言語「kawaii」とハローキティ
世界の共通言語として「カワイイ」を広めたキッカケはなんとハローキティなのです。
口が描かれていないので、表情をユーザー側が想像しながら楽しめるのも他とは違った特徴です。
サンリオの歴史は1960年代の高度経済成長から始まりました。
その後、戦後不況が終焉すると人々は遊びを含めた余暇を求めるようになりました。
そんな中に、満を持して登場したのがハローキティでした。
ハローキティはその後大人がカワイイを卒業するという概念を塗り替えました。
時代に合わせた変化をすることで、女の子だけではなく女性にも愛されるようになったのです。
ハローキティがもたらした価値観の革命は世界にも飛び火しました。
Sexyが重んじられていた海外の女性がファッションにハローキティを取り入れる事でCuteも受け入れられるようになったのです。
しかし、近年はではキティへの依存度が高い現状を鑑みて「NEXT KAWAII PROJECT(ネクスト カワイイ プロジェクト)」が発足されているといいます。
社内コンペを通過した25の新キャラクターに対して、
デザイン、動画、グッズの段階ごとにファン投票を実施し、最終的に1位を獲得したキャラクターがデビューするというプロジェクトです。
同様のプロセスを見せる手法はNiziUやJO1のオーディション番組にも通ずるものと言えます。
現代IP創出における「共感」の重要性
サンリオは「共感」こそが現代キャラクターの必須要素だと語っています。
同社のぐでたまはまさにその最たる例といえます。
2013年にキャラクターが生まれ、2023年現在では10周年を迎えました。
ぐでたまの特徴は、やる気のない態度や気怠そうな言葉遣いです。「ダリィ・・・」や「ねみぃ~」というセリフが代表的です。
従来のかわいい路線ではなく、本音や共感を生む「アンチヒーロー」的な要素が大きいのです。
海外のIP創出事例
プーさん
プーさんは、イギリスの作家A.A.ミルンが息子のクリストファー・ロビンのぬいぐるみをモデルにして書いた『クマのプーさん』という児童文学作品に登場するキャラクターです。
1966年からディズニーによるプーさんのアニメーションが制作されました。
児童文学における勧善懲悪へのアンチテーゼ
作品の中で勧善懲悪や教訓めいたものが出現しないのが最大の特徴です。
ひたすらナンセンスかつユーモアたっぷりのやりとりが続くのが、過去の定番IPとの違いでもあり大きな魅力なのです。
例えば次のようなストーリーが挙げられます。
『ウィニー・ザ・プー』の最初の話では、プーはハチミツを食べるために青い風船につかまって空に飛びます。
そして泥で真っ黒になれば、空の青と黒が合わさってハチたちが気づかないと思います。
でもそんなことはありません。プーは風船につかまりながら、木の下で見ているクリストファー・ロビンに「僕はどう見える?」と聞きます。
クリストファー・ロビンは「風船につかまったクマだよ」と答えます。
「それだけじゃなくて……」とプーは心配します。
結局プーはハチミツを手に入れられず、クリストファー・ロビンが銃で風船を撃ってくれて、やっと地面に降りることができたのでした。
ディズニー
ディズニーは、1923年にウォルト・ディズニーとロイ・O・ディズニーによって設立されました。
最初はアニメーション映画を制作していましたが、その後、テレビ番組、テーマパーク、グッズなど様々な事業を横展開させていきました。
テーマパーク分野においてですが、世界初のディズニーランドが1955年にカリフォルニア州アナハイムにオープンしました。
日本で最初のディズニーリゾートは、1983年に東京ディズニーランドがオープンしました。
その後、1992年にフランスのパリ、2005年に香港、2016年に中国の上海にもディズニーランドがオープンしました。
ディズニー人気の理由
ディズニーの人気の理由は、様々な要素がありますが、以下の3つが代表的だと言えます。
- ディズニーランドやディズニーシーでは、日常から切り離された別世界に入り感情の没入が可能
- ディズニーのアトラクションやショーは、原作のアニメや映画と一体的に楽しめるのに加えて、原作を知らなくても楽しめる工夫もされている
- ディズニーは、子供から大人まで幅広い年齢層に対応している
マーベル
マーベルは、1939年にタイムリーコミックスとして設立されたアメリカのコミック出版社です。
当初はスーパーマンやバットマンなどのDCコミックスの影響を受けたキャラクターを作っていましたが、1960年代に入ると、スパイダーマンやアイアンマンなどのオリジナルのヒーローを生み出しました。
マーベルは、現実的で複雑な人間性を持つヒーローや、社会問題や政治的なテーマを取り入れたストーリーで人気を博しました。
また、様々なキャラクターが同じ世界観で共演する「マーベル・ユニバース」も独自の魅力です。
2000年代以降は、映画やテレビ番組などのメディア展開も盛んに行っています。
特に「マーベル・シネマティック・ユニバース」と呼ばれる一連の映画作品は世界的な大ヒットとなりました。
IP育成に関する技術的パラダイム・シフトと接触深度の歴史と未来
この記事の本題とも言って良い部分ですが、
現在接触深度という観点で、IP創出にはパラダイムシフトが起こっていると考えております。
そもそもIPとは接触人数、接触時間、接触深度の掛け算が重要な要素になっています。
IPにおける重要3要素 接触深度、接触時間、接触人数
IPを育てる際に、接触深度、接触時間、接触人数を最大化する事が非常に重要になります。
- 接触深度: 接触深度は、顧客がIPにどれだけ熱中し、没頭しているかを示します。接触深度を高めることで、ファンの熱狂度が高まり、IPの価値が向上します。
- 接触時間: 接触時間は、ファンがIPにどれだけの時間を費やしているかを示します。接触時間が長ければ長いほど、IPとのつながりが強くなり、ロイヤルファンが増えるでしょう。
- 接触人数: 接触人数は、IPに触れる人々の数を示します。接触人数が多ければ多いほど、IPの認知度が高まり、さらなるファン獲得につながるというわけです。
ラジオ・映画時代(20世紀初頭~1950年代)
20世紀初頭からラジオの発明により、情報やエンターテイメントの伝播がさらに促進されました。
その際に映画も同様に普及し、視覚的なメディアが広まりました。
さらに映画の最大の特徴として、映画以外のながら行為を許さずに没入できる点が挙げられます。
この映画を起点にしてIPを創出したのがディズニーです。
最初の長編アニメ映画は「白雪姫」で、1937年に公開されました。
その後も「ピノキオ」、「ファンタジア」、「バンビ」などの名作を生み出しました。
これがディズニーのIP創出の第一歩ともいえるのです。
ゲーム・インターネット時代(1990年代~)
インターネットの登場により、情報伝播の方法が大きく変化しました。
ウェブサイト、ブログ、電子メールなどのデジタルメディアが広がり、情報のアクセス性が一層向上しました。
また、インターネットとゲームはこれまでの一方通行なメディアとは違い、相互性を生み出しました。
特に、ゲームを起点としたIP創出を行ったのが日本が誇るメガIPであるポケモンです。
ユーザーが出力した内容に応じて、出力内容が変わったり、自身の収集などの記録がログとして残ったりする点が過去のメディアにはない大きな革命だといえます。
ポケモンは、1996年に最初のゲームソフト『ポケットモンスター 赤・緑』が発売されました。
同期通信・ソーシャルメディア時代(2000年代~)
SNSの登場は、人々のコミュニケーション方法を大きく変えました。
さらにSNSにおけるLIVE配信が生み出した最大の功績は同期通信です。
その同期通信をフル活用してIP創出を行っているのがVTuberです。
リアルタイムに相手が反応し、ゲームとは違う個別性の高い返事を送るという点に関してはゲームをも凌ぐ接触深度を誇っています。
接触人数、接触時間、接触深度の掛け算がIP創出の要である中でその全てを兼ね備えた現代のフォーマットがVTuberなのです。
過去の映画とゲームはスタートアップが挑戦するには大資本が必要なものでしたが、このLIVE配信を起点にした同期通信は今後あらゆるエンタメの中枢を担うフォーマットだといえるでしょう。
VTuberと接触深度のまとめ
VTuber(バーチャルYouTuber)は、人気が高まっているデジタルメディアの一つです。
接触深度という観点からVTuberをさらに考察すると、以下のような特徴があります。
- 同期通信性: VTuberは、視聴者との同期通信性を重視しています。ライブストリーミングやコメント欄でのやり取りなどを通じて、視聴者はVTuberと直接コミュニケーションを取ることができます。
- エンゲージメント: VTuberのコンテンツは、ゲーム実況や歌、ダンス、トークなど、幅広いジャンルでの価値提供を行っています。
- コミュニティ形成: VTuberは、視聴者同士のコミュニケーションを促すことで、独自のコミュニティを形成しています。
- 多様性: VTuberは、多様なキャラクターやコンセプトが存在し、幅広い視聴者層に訴求しています。
- グローバル展開: VTuberは、言語や国境を越えて人気を獲得しています。
これらの特徴から、VTuberは接触深度の高いメディアであると言えます。
もちろんボラティリティは大きいのですが、今後スタートアップが取り組む際には選択肢の1つとして魅力的なドメインと言えます。