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IP事業

日本と米国における著作権の比較、及びビジネス視点からの考察

2023.4.14

こんにちは。pamxy代表の西江です。
IP(知的財産権)と事業として向き合っている弊社では、
知的財産権の中に包含される著作権についても造形を深めることが自社の権利を保護し、
意図しない権利侵害を防ぐことに繋がっていきます。

著作物の権利周りの定義などは時代や国・地域によって異なるものの、基本的な考え方は共通化する方向にあります。

そこで今回は改めて著作権の分類をした上で、日米での取り扱いの差、VTuberなどの知的財産権における企業として取り扱いのポイントについて明記していきたいと思います。
この記事をキッカケとしてクリエイターや企業の双方にとってよりよい社会になる事に少しでも寄与できれば幸いです。

著作権の目的について

著作権の理解には、著作権の目的について把握すると役に立つのでご紹介したいと思います。

著作権は主に、

  • 著作者(創作物を創る者)
  • 伝達者(創作物を広める者)

の2者を保護する法律です。

創作物を創っただけでは世の中には広まりません。

創り手のみならず、伝達者の権利に関しても保護されるべきなのです。

その結果、著作権が素晴らしい文化の発展に寄与するのです。

広義の著作権の分類について

広義の著作権は、以下のような構造と分類になっています。

一言で「著作権」の定義にも、広義と狭義の著作権が存在します。

広義の著作権として体系的に表現すると以下のようになります。

  • 広義の著作権
    • 著作者の権利
      • 著作財産権
      • 著作人格権
    • 著作隣接権

著作者の権利

著作財産権について

著作財産権は、著作物に対する経済的権利を保護する権利です。
著作者は著作物の複製、頒布、貸与、翻訳、映画化などに関する権利を保有しています。
このように著作者が自分の著作物に対して持つ経済的権利のことを特に著作財産権といいます。

著作財産権には、以下のような要素が含まれます。

  1. 複製権 著作者が自分の著作物を複製することを認めるかどうかを決定する権利です。
    複製権を持っている著作者は、自分の著作物を複製することを他人に認めることができます。
  2. 頒布権 著作者が自分の著作物を頒布することを認めるかどうかを決定する権利です。
    頒布権を持っている著作者は、自分の著作物を他人に販売することを認めることができます。
  3. 公衆送信権 著作者が自分の著作物を公衆に送信することを認めるかどうかを決定する権利です。
    公衆送信権を持っている著作者は、自分の著作物をテレビやラジオなどの放送、映画館での上映、インターネットでの配信などで公衆に送信することができます。
  4. 公衆上演権 著作者が自分の著作物を公衆に上演することを認めるかどうかを決定する権利です。
    公衆上演権を持っている著作者は、自分の著作物を舞台での上演やコンサートなどで公衆に上演することができます。
  5. 翻案権 著作者が自分の著作物を翻案することを認めるかどうかを決定する権利です。
    翻案権を持っている著作者は、自分の著作物を翻案して映画化やテレビドラマ化などの作品を製作することができます。
  6. 公衆利用許諾権 著作者が自分の著作物を利用する許可を認めるかどうかを決定する権利です。
    公衆利用許諾権を持っている著作者は、自分の著作物を利用したい者に対して許可を与えることができます。

上記要素以外にもいわゆる『二次創作』と言われるカルチャーにも代表されるような、二次的著作物に関する権利などの二次使用に関する権利なども存在します。

著作者人格権について

著作者人格権(ちょさくじんかくけん)とは、著作者に対して表現物に対する人格的権利を保護する権利のことです。
著作人格権には、以下のような要素が含まれます。

  1. 公表権 著作者が自分の著作物を公表するかどうかを決定する権利です。公表権を持っている著作者は、自分の著作物を公表することを他人に許可することができます。
  2. 署名権 著作者が自分の著作物に署名するかどうかを決定する権利です。署名権を持っている著作者は、自分の著作物に署名することを他人に認めることができます。
  3. 公開停止権 著作者が自分の著作物の公表を停止する権利です。公開停止権を持っている著作者は、自分の著作物が不正確な情報を含んでいる場合や、著作者の意思に反する形で利用された場合に、公表を停止することができます。
  4. 著作物の改変、翻案、複製、公開、貸与などに対する同意権 著作者が自分の著作物を改変、翻案、複製、公開、貸与などすることを認めるかどうかを決定する権利です。同意権を持っている著作者は、自分の著作物が不適切な形で利用されることを防ぐことができます。
  5. 著作者名の表示権 著作者が自分の著作物に対して著作者名を表示するかどうかを決定する権利です。表示権を持っている著作者は、自分の著作物に著作者名を表示することを他人に認めることができます。

以上が、著作者人格権に含まれる要素です。著作者人格権は、著作者が自分自身や自分の著作物に対する権利を保護するものであり、著作財産権とは異なります。

著作隣接権

著作隣接権について

著作隣接権(ちょさくりんせつけん)とは、著作権に付随する権利のことで、著作物の利用に関連する権利を指します。
具体的には、音楽や映像の演奏、録音、放送、上映、インターネット配信などに関する事業者などに付与される権利の事です。

著作隣接権には、以下のような種類があります。

  1. 音楽隣接権 音楽作品の演奏や録音、配信、放送などに関する権利で、著作者以外のレコード会社や音楽配信業者などが保有します。
  2. レコード製作者隣接権 音楽や劇音楽の録音物の制作や販売に関する権利で、レコード会社などが保有します。
  3. 放送事業者隣接権 放送や通信衛星放送などに関する権利で、放送局やケーブルテレビ局などが保有します。
  4. 映画製作者隣接権 映画の上映、放送、レンタル、販売に関する権利で、映画制作会社が保有します。

これらの著作隣接権は、著作権と同じように、著作物の利用に関する権利であり、著作者以外の関係者にも付与されます。
著作隣接権には、著作者と異なる人物が権利を持つことがあるため、著作物の利用にあたっては著作隣接権者との契約が必要となる場合があります。

日米の著作権における扱いについて

日本と米国は、知的財産権に関する法律において多くの共通点がありますが、著作権についてはいくつかの違いがあります。

著作権の保護期間

最も顕著な違いは、著作権の保護期間です。
日本では、著作権の保護期間は著作者の死後50年間と定められていますが、米国では、最初に公表された場合は著作者の死後70年間、法人によって創作された場合は公表後95年間の保護期間が設定されています。

フェアユース

また、米国では、著作権には「フェアユース」という概念があります。
これは、著作物を引用することが適切な場合、または批評、教育、研究、報道などの目的で使用される場合は、著作権者の許可を得なくても使用できるというものです。
一方、日本では、著作権法において「合理的な範囲内での引用」が認められていますが、米国のフェアユースのような柔軟性はありません。

審議の時間

その他の違いとしては、米国では、著作権に関する紛争を解決するための専門の裁判所である著作権紛争解決裁判所が存在し、速やかな判断が下されることが期待できます。
一方、日本では、著作権に関する紛争は一般的に知的財産高等裁判所や地方裁判所で審理され、時間がかかることが多いです。

以上のように、日本と米国の著作権に関する法律には、保護期間や引用に関するルール、紛争解決の仕組みなど、いくつかの違いがあります。
しかし、どちらの国でも、著作者の権利を尊重し、創造的な活動を促進するために、適切な法的枠組みが整備されていることは共通しています。

法人が著作権を保有できるかの観点について

従業員の場合

日本と米国において、法人が著作権を持つことができるかどうかについては、法律上の違いがあります。

日本の場合、法人も著作物を創作することができ、著作権を取得することができます。
例えば、企業が広告やマニュアル、プログラムなどを制作した場合、これらは法人によって著作権が保護されます。
また、従業員が企業の業務のために創作した著作物についても、企業が著作権を取得することができます。

一方、米国では、法人は自身が創作した著作物について著作権を取得することができますが、従業員が制作した著作物については、従業員自身が著作権を所有する場合が一般的です。
ただし、従業員が企業の業務のために創作した著作物については、雇用契約によって法人が著作権を取得することができます。

このように、日本と米国において、法人が著作権を取得するための条件や方法には差異があります。
しかし、どちらの国でも、著作物の創作や利用においては、著作権者の権利を尊重することが重要であり、法的手続きを遵守することが求められます。

社外の業務委託の場合

日本と米国の著作権の扱いにはいくつかの違いがありますが、業務委託で制作したイラストなどの著作物の所有権を法人が買い取ることについては両国とも一定のルールがあります。

まず、日本の場合、著作権法において、委託契約によって制作された著作物については、制作者が明示的に放棄しない限り、制作者に著作権があります。
つまり、業務委託契約において、法人が著作物の所有権を取得するためには、制作者との別途の契約が必要です。

一方、米国の場合、著作権法においては、委託契約によって制作された著作物については、制作者が委託契約書で放棄しない限り、著作権は制作者に帰属します。
しかし、一定の条件下で法人が著作権を取得することができます。
たとえば、契約書において明確に著作権の譲渡が合意されている場合や、制作者との別途の契約で著作権の譲渡が合意されている場合などがあります。

つまり、日本と米国の著作権の扱いにおいては、業務委託契約によって制作された著作物の所有権を法人が取得するためには、制作者との別途の契約が必要であることが共通しています。
しかし、米国の場合、委託契約書において著作権の譲渡が明確に合意されている場合は、法人が著作権を取得することができる点が異なります。

法人が保有できるVTuber周辺の権利について

日本と米国における著作権の違いについて、法人が保有できるVTuber周辺の権利に関する注意点は以下の通りです。

  1. 著作権の譲渡とライセンス: 日本では、著作権は譲渡が可能であり、法人がVTuberの著作権を保有することができます。また、著作権者は第三者に対して使用許諾(ライセンス)を与えることができます。一方、米国でも著作権の譲渡やライセンスが認められていますが、書面による契約が必要とされるケースが多いため注意が必要です。
  2. 商標権: VTuberのキャラクター名やロゴ、キャッチフレーズなどは商標権の対象となります。法人がVTuber周辺の権利を保有するためには、日本及び米国での商標登録を検討すべきです。各国での商標登録を行うことで、他者からの権利侵害を未然に防ぐことができます。
  3. 肖像権: 肖像権は、キャラクターの顔や外見を保護する権利です。日本では肖像権は明確に法律で定められていないものの、不当利得やプライバシー侵害として保護される場合があります。米国では、肖像権が州法で保護されているため、活動範囲に応じた対応が必要です。
  4. 契約関係の明確化: 法人がVTuber周辺の権利を保有する場合、著作者(デザイナーや声優など)との契約関係を明確にすることが重要です。特に、著作権の譲渡や使用許諾、報酬などの条件を書面による契約で明確にし、トラブルを避けるべきです。
  1. コンテンツのライセンス取得: 法人が保有するVTuberが音楽や映像などの著作物を使用する際には、著作権者から使用許諾を得ることが必要です。特に、日本の著作権法では、他者の著作物を無断で利用することは基本的に認められていません。米国の場合は、フェアユースの適用範囲を考慮しつつ、著作権者の許諾を得ることが望ましいです。事前に必要な許諾やライセンスを取得し、合法的なコンテンツ制作を行うことが重要です。
  2. ファンアートや二次創作物に対する対応: ファンアートや二次創作物に対する対応は、各国の著作権法によって異なります。日本では、一定の範囲で許容される文化がありますが、米国ではその範囲が異なるため注意が必要です。著作権者の許諾がない場合、二次創作物の販売や配布が著作権侵害とみなされる可能性があります。法人として適切なガイドラインを設定し、ファンアートや二次創作物に対する対応を明確にすることが求められます。

注意点として、国際的な活動を展開する場合は、言語や文化の違いに配慮し、コンテンツが世界中の視聴者に適切に伝わるよう努めることも重要です。
例えば、特定の国や文化に対する不適切な表現やジョークは、視聴者を不快にさせるだけでなく、権利侵害や法的トラブルにもつながる可能性があります。

最後に、法人が保有するVTuberの成功のためには、著作権に関する法律やルールを遵守するだけでなく、他者とのコミュニケーションやコラボレーションを大切にし、独自の魅力を発信し続けることが求められます。
適切な権利管理を行いながら、国内外のファンに喜んでもらえるVTuber活動を展開していくことが大切です。
また、法人としての社会的責任を果たすためにも、コンプライアンスを徹底し、従業員や関係者が著作権法や関連法規に遵守する環境を整えることが重要です。

さらに、著作権法や関連法規は国ごとに異なるため、海外展開を検討する場合は、その国の法律や規制にも配慮する必要があります。
適切な法的アドバイスを受けることで、権利侵害や法的トラブルを未然に防ぎ、スムーズなビジネス展開が可能となります。

最後に、法人が保有するVTuberのブランディングやプロモーションにおいても、著作権や商標権を含む知的財産権に十分に配慮し、他者の権利を尊重する姿勢が重要です。

   

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