pamxy代表の西江です。
pamxyでは一般的なスタートアップよりも早い段階から人事制度の確立を急いでいました。
30人までの初期フェーズでは代表が決定することも多いと思うのですが、
10人を超えたあたりから当然の如く自分が直接マネジメントしていないメンバーが出てきます。
そういったメンバーの評価を自分のみで決定する事への強烈な違和感がありました。
純粋に上長ではない人のみで評価を最終決定されたとして、それは適性な評価になりえるのか。
そういった事を鑑みて、早めに事業人さんという会社にコンサルティングに入ってもらい自身がPMとなり整備を進めていました。
あくまでコンサルの方に伴走してもらいながら決して丸投げはせずに、pamxyという環境変数に応じた制度を模索していきました。
人事評価制度はかなりセオリーのある領域なので、このあたりは自分でゼロイチをつくるよりも
その道のプロにお願いしてベースを作成していただいた後にバリュー評価の部分などで個性を出す事を心がけました。
スタートアップによっては一見ユニークな人事制度などがよくあります。
それは採用広報の面では短期的にはメリットがありますが、長期ではそのユニークさに縛られ組織として硬直する可能性が高いと思ったからです。
メンバーが安心して働けるように、できるだけ評価基準の具体と抽象のバランスを配慮して作成する事を心がけました。
人事評価制度の3指標
評価制度
短期的な実績に基づく評価です。
弊社では半期毎に評価を実施しております。
パフォーマンスとコンピテンシーとバリューの3つの指標を基に設計しております。
期初にそれぞれの項目の目標とプロセスを上長と設定していく定石に則ったオーソドックスなものになっております。
評価制度で用いられている3指標
- パフォーマンス
事業における実績 - コンピテンシー
スキルや会社貢献度などの、能力や行動特性 - バリュー
価値観
等級制度
長期的な実績に基づく評価です。
評価制度と同様に、
期待パフォーマンスとコンピテンシーとバリューの3つの指標を基に設計しております。
また、外部要因と内部要因に分けて適性に等級を決定する必要がある項目です。(評価制度も場合によってはこの点を考慮する必要がある)
外部要因と内部要因
いわゆる外部要因には市場環境や組織の意思決定によるものがあります。
例えば、期初の時点の市況環境が変わりプロダクトの売上に影響が出た場合(良い場合も悪い場合も)に、これは個人の等級とは別のものとして切り分ける必要があります。
新規事業と既存事業での評価方法
新規事業と既存事業では評価の着眼点を変える必要があります。
この2つの明確な違いはどこでしょうか。
それは
- 過去の実績データによる予測難易度
です。
既存事業は一人あたりのパフォーマンスの平均値や粗利や営利含めて、あらゆるデータが存在します。
その点において、期待パフォーマンスの難易度の見立てなどは新規事業と比較すると、ある程度予測可能なものです。(こちらも簡単ではないですが)
新規事業に関してはほとんどデータがありません。
弊社では新規事業に対する評価で見るべきポイントとして
- QCD
を上げています。
ビジネスの文脈でのQCDは、品質(Quality)、コスト(Cost)、納期(Delivery)の頭文字を取ったものです。
- 品質(Quality):製品やサービスが顧客の要求を満たし、安全で信頼性があることを指します。品質の高い製品やサービスは顧客満足度を高め、ビジネスの評価を向上させます。
- コスト(Cost):製品の製造費用やサービスの提供費用を指します。低コストで高品質な製品やサービスを提供できれば、それはビジネス上の競争優位性につながります。
- 納期(Delivery):製品やサービスを顧客に届ける時間を指します。納期の遵守は顧客の信頼を獲得し、ビジネスの信頼性を高めるために重要です。
この3つの要素は、ビジネスでの成功を決定する重要な要素であり、企業が持続的な競争力を維持するためには、これらのバランスを適切に取ることが求められます。
既存事業はどうしても営利などがKGIになりやすいですが、
新規事業は営利がすぐに出ないので、QCDを評価軸とするのがおすすめです。
しかし、どの期間から新規事業を既存事業として扱い始めるのかを決めておくのも大切になります。
pamxyで取り組んでいる等級
等級に関してですが、弊社では現在は7等級を定めて、アソシエイト〜役員レベルまで定義しております。
定義の一部ではありますが、公開したいと思います。
報酬制度
報酬制度は前述した評価制度と等級制度に基づいて決定される報酬制度です。
弊社では評価グレードによる昇給と、等級グレードによる昇格があります。
そして等級により報酬のレンジが存在しています。
役割等級制度
pamxyでは役割(役職)と等級を概念として切り分けて運用する役割等級制度を導入しております。
メリット
「上が詰まる」が起こらない
これは役割(役職)と等級が紐づかないので、いわゆる「上が詰まる」というのが防止されます。
もし役割(役職)と等級が紐づくと、例えば「◯◯事業部長になれないと◯等級にはなれない」という事象が発生してしまいます。
役割等級制度ではこれが起こらないので、評価自体が役職による干渉を受けずに適性に行えるというメリットがあります。
柔軟な組織体制の構築
役割(役職)にこだわらないスタンスだからこそ、組織体制も柔軟に変更ができる事がメリットです。
変化とスピードを求められるスタートアップだからこそ、一層相性の良い制度だともいえます。
デメリット
メンバー理解の難易度
役職と等級が紐づかないとはいえ、体感値として役職が変わったメンバーからすると場合によっては降格のように感じる可能性もあります。
なので、代表やHRが人事評価制度の意思や意図をメンバーに伝え、理解してもらってはじめて運用が回る制度だともいえます。
役職にこだわらずにissueに向き合えるようにしないといけません。
人事評価制度は創って終わりではなく、運用も含めて制度といえるほど運用者次第で活かすも殺すも決まってくるものでもあります。
人事評価制度は永遠に進化すべきもの
人事評価制度に終わりはありません。
常に組織の環境変数に応じて、進化すべきだからです。
制度作成〜運用〜改善を行い組織にとって最適な制度なのかを常に疑い続ける必要があります。
全員に受け入れてもらえる完璧な制度など世の中に存在しない前提(人事制度に限らず)ではありますが、
全ステークホルダーの最大公約数を取る為に思考する事を諦めてもいけないのです。
交通事故は無くならないとしても、信号機や交通ルールの整備、自動運転などの技術、等を通じて人類が理想を追い求める事を諦めないのと同じように。
事実としてスタートアップだからという事象は常に往々にして起こりますが、スタンスとしては決して言い訳にしてはいけません。
もちろん運用側の負担は大きいですがメンバーが快適に働く事は結果として、ステークホルダーや社会全体にとって良い影響を及ぼすものだと信じているからです。
これからも人事評価制度に限らずに前提を疑いつつ、Beyond the Moonに大胆に挑戦して進化を続けて行きます。